2025年4月10日から2日間、台湾・台南の下營という地区を訪れました。
下營は観光地として派手な見どころが多いわけではありませんが、人と人との温かい交流が感じられる、とても魅力的なローカルタウンです。
私が初めてこの地を訪れたのは、台湾一周徒歩環島の旅の際で、今回の再訪をとても楽しみにしていました。台南旅行の際にぜひ足を運んでいただきたい、そんな街のひとつです。
今回は、そんな下營のリアルな姿を感じてもらうために、観光情報も交えつつ、旅の体験を中心に旅行記風でお届けしたいと思います。
アクセス
2025年4月10日、私は嘉義県の港町・布袋にいました。
この日から2日間かけて、台南の下營というローカルな街を訪れる旅に出ます。布袋から下營へは、バスを乗り継いで行く必要があります。
まずは11:20発の棕6返程バスに乗り、布袋遊客中心から新營客運新營站まで向かいます(12:15着)。
次に、13:00発の黃5去程バスに乗り換え、新營客運新營站から下營廟前まで行きました(13:35着)。
いつも感じるのですが、台湾の田舎道を走るバスは運転が荒く、スピードも出すので、乗車はまさに命がけ。とはいえ、これもまた台湾ならではのアクティビティだと思えば楽しめます。
無事に新營駅に到着し、近くのスーパーでお菓子を買ってから下營行きのバスを待ちました。
心配性な私はスタッフさんに下營へ行きたいこと、この場所で待っていれば問題ないかを確認し、やっと安心できました。
しかし時間になっても黃5去程の下營廟前行きのバスが来ません。するとスタッフさんが「早くこっちへ」と手招きします。
やってきたのは「麻豆」行きのバスで、方面は合っているものの本当に乗っていいのか迷いました。
どうやら同じ路線のバスで、ただ「下營廟前行き」と表示されていないだけのようでした。
事前にスタッフさんに確認しておいて本当に良かったと心から思いました。
インターネットの情報では「黃5去程 新營 → 下營 → 曾文市政願景園區」と記載されていたため、バスの表示も同じだと思い込んでいました。
新營からバスで向かう方は、ぜひ十分ご注意ください。もしくは台南駅からのバス利用をおすすめします。
黃5去程の情報はこちら
南安大旅社

下營に到着。約一年半ぶりの訪問です。前回の台湾徒歩環島の旅でもお世話になったこの街の景色を改めて眺めると、しばらくの間、感慨にふけってしまいました。
まだ少し早い時間でしたが、荷物を預けられるかどうか、今回もお世話になる老舗旅館『南安大旅社』へ向かいました。
この旅館は台南・下營区の中心に位置し、60年以上の歴史を持つレトロな宿です。かつてのままの趣ある佇まいと、親切なオーナーの小姜さんが温かく迎えてくれます。前回同様、今回も「特別なゲストであり友人だから」と、チェックインを早めてくださり、無料で自転車の貸し出しもしていただきました。とてもありがたい心遣いです。

2025年7月に台南を直撃した台風では、旅館の看板が壊れてしまい、新しい看板の制作が必要になってしまったそうです。しかし営業自体は休む事なく続いております。
もし台湾南部旅行を計画されている方がいらっしゃれば、下營の『南安大旅社』はレトロな雰囲気が好きな方にとって最高の宿泊先です。可愛い3歳の看板犬「牛牛」も大きいですが、とても穏やかで訪れる人々を歓迎してくれます。ぜひ宿泊先の一つとして検討をお願いいたします。

小熊維尼彩絵村

久しぶりに個室の部屋で、チェックイン後は思わず昼寝をしてしまいました。少し観光しようとゆっくり起き上がり、まずは「小熊維尼彩繪村」へ向かうことに。
小熊維尼彩繪村は、台湾・台南市下營区にある人気の観光スポットです。地元の若者たちが地域活性化と景観美化を目的に、古い街並みにディズニーの小熊維尼(プーさん)を中心としたカラフルでかわいいキャラクターの壁画を多数描いたことで知られています。
この彩繪村は単なる写し絵ではなく、地域の歴史や文化も取り入れた作品が多く、訪れる人々を楽しませています。広いエリアにわたって絵が描かれており、撮影スポットとしても人気で、特に写真好きや家族連れにおすすめの場所です。
年間を通じて開放されており、午前中の比較的人が少ない時間帯に訪れると、ゆっくり撮影や散策が楽しめます。
ちなみに、南安大旅社からはとても近く、ホテルを背にして右にまっすぐ行くと徒歩1分で到着できます。著作権など気になる点もあるかもしれませんが、一つ一つの絵に個性があり、見ていてとても面白いです。
下營北極殿(玄天上帝廟)

続いては、下營北極殿(玄天上帝廟)へ向かうことに。
「北極殿」は下營のランドマークであり、地域の信仰の中心とも言える存在です。その歴史は古く、1661年に建立されたと伝えられています。鄭成功の部将・劉國軒が下營開拓の際に建てたとされ、その後何度も改築を重ね、現在の立派な三階建ての姿となりました。
特に盛り上がるのは、毎年旧暦3月3日の玄天上帝の誕生日を中心とした期間(旧暦3月1日〜5日)。この時期は台湾各地から伝統芸能団体(陣頭)が集まり、地域の人々とともに神輿が街を練り歩く、活気ある祭典が行われます。
廟内には「文化館」も併設されており、100〜200年前の石碑、扁額、香炉、詩占いの版木、書画など、貴重な文化財が数多く展示されています。台湾の宗教や歴史に興味のある方には、見逃せないスポットです。
また北極殿では、5体の玄天上帝がそれぞれ異なるご利益を持って祀られており、お願いごとに応じて参拝する神様を選ぶという文化もあります。
お参りは1階が中心ですが、時間があればぜひ上の階にも登ってみてください。長閑な下營の町並みが見渡せて、心がふっと和らぎます。
さらに、北極殿の目の前にある呉承恩公園も中華庭園風の落ち着いた雰囲気で、ゆったりと散策するのにぴったりの場所です。合わせて訪れるのがおすすめです。

賀雅嵐 下營 宵夜小吃

夕食は「賀雅嵐 下營 宵夜美食」というお店でいただきました。
ここは築70年以上の歴史ある古民家をリノベーションした宵夜小吃のお店で、元々は地域でも名の知れた名家の住まいだったそうです。高学歴で地域の名士だった方が住んでいた家をそのまま活かし、雰囲気を残したまま改装したとのこと。とても趣のある空間で、どこか懐かしさを感じるような店構えが印象的です。
私はここで、カツカレーを注文。台湾のローカルな町でいただくカツカレーというのもなかなか乙な体験。サクサクのカツに、台湾らしいちょっと甘めのカレーソースがよく合って、とても美味しかったです。
店内には地元の方が数組いて、夕方のほっとしたひとときを過ごしている様子。地元の人々に愛されているのが伝わってきました。
下營の中心部にあり、アクセスも便利です。もし夕方以降に下營で食事をされる方にはおすすめの一軒です。
あっという間に完食してしまいましたが、まだ腹八分目。もう少し何か食べようかと、食後に下營の町を少しだけ散歩してみました。
ところが、急にどっと疲れが押し寄せてきて、足取りもゆっくりに。あまり無理をせず、この日はホテルに戻って早めに休むことにしました。

老塘湖藝術村

翌日は、体調がそのまま回復せず、目が覚めたのはなんと14時半ごろ。体は重く、まだ熱っぽさもありましたが、せっかく自転車も借りていたし、どうしても行きたい場所が一つだけあったので、頑張って準備することにしました。
しかし、自転車にまたがると、灼熱の日差しとだるい身体に力が入らず、ペダルがやけに重たく感じます。それでも気力を振り絞って前へと進みました。
途中、農道を通っていると、突如現れた野良犬に追いかけられる事態に。しかも5~6匹ほどの群れで、家族なのか、まとまってこちらをめがけて走ってきます。下營に野良犬が多いことをすっかり忘れていました。なんとか逃げ切ると慌てて自転車を降り、草むらに倒れ込むようにして休憩。まだ自転車だったからよかったものの、これが徒歩だったら…と想像してぞっとしました。
そんな苦労の末、たどり着いたのが下營郊外にある「老塘湖藝術村」。ここは元々、廃棄された養殖池だった場所を、高雄・左營出身の手指画家、匡乙(本名:匡進福)さんが30年以上の歳月をかけてアート空間へと生まれ変わらせた、唯一無二の芸術スポットです。
匡乙さんが打ち出す「創舊派」と呼ばれるスタイルは、古い木材や瓦、赤レンガ、石材など、台湾各地の廃材を使い「風化・老朽・簡陋」という美学を表現するもの。園内には、赤い提灯が並び、石橋、アーチ門、木造の楼閣などが独特の世界観を形づくっており、どこを切り取ってもまるで映画のセットのような幻想的な空間が広がっていました。
フォトスポットも多く、湖に映る建物の影がゆらめく風景は、とても印象に残っています。観光地ではありますが、商業的すぎず、ひとつひとつの構造物に作り手の想いが込められているのが伝わってきます。
ただ、体調が万全でなかったため、滞在は短時間で切り上げることに。ホテルへ戻ろうとしたところ、スタッフさんが事情を聞いてすぐにタクシーを手配してくれ、自転車も一緒に乗せられるかどうかまで確認してくださいました。本当に感謝しかありません。
結果的に、ご迷惑をかけてしまったことが申し訳なく、「体調がすぐれない時に無理をしてはいけないな」と、旅の途中で改めて痛感することとなりました。

いざノスタルジーの旅へ
今回の下營の旅は、派手な観光地を巡る旅とはひと味違い、人の温かさや土地の息づかいをじっくりと感じられる、まさに“暮らすように旅する”ような時間でした。小さな町の中に、懐かしさと優しさが詰まっていて、一歩歩くごとに、地元の人々のまなざしや空気のやわらかさに触れることができた気がします。
体調を崩してしまったのは思いがけない出来事でしたが、その中でも、地元の方達の親切な対応に何度も助けられ、改めて「旅は人との出会いがすべて」と実感しました。下營の町は、観光地としてのにぎやかさよりも、訪れる人をそっと受け入れてくれるような、そんな静かな魅力にあふれています。
確かにふらっと立ち寄るには少し不便な場所かもしれません。でもだからこそ、そこに足を運んだ人だけが味わえる温もりがあるのだと思います。
きっとまた、何かのタイミングでふと訪れたくなる、そんな特別な場所が、私にとっての下營です。
台南を訪れる予定の方は、ぜひ少しだけ足をのばして、この静かで優しい町に触れてみてください。きっと、心に残る時間になるはずです。
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↑初めて下營を訪れた際の動画はこちらをご覧ください
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