台湾で本当に美味しい魯肉飯を探してみた|台北・新竹・台南を旅する中で出会った究極の一杯とは?

台湾で本当に美味しい魯肉飯を探してみた|台北・新竹・台南を旅する中で出会った究極の一杯とは?
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魯肉飯——それは台湾の有名な小吃(シャオチー)であり、まさにソウルフードである。
台湾が好きな人、あるいは一度でも訪れたことがある人なら、きっと一度はその味を口にしたことがあるのではないだろうか。

近年では、日本でもレトルト商品や台湾フェスで見かけることが増え、
本場の味とは多少違えど、「魯肉飯」という名前が少しずつ浸透してきた印象がある。

魯肉飯を知ることは、台湾を知ること。
この小さな茶色い丼ぶりには、台湾の歴史や地域性、そして人々の暮らしがぎゅっと詰まっている。

今回は、私が台湾を旅する中で出会った数々の魯肉飯と、その中で見つけた“究極の一杯”について、エッセイ風に綴ってみたいと思う。

目次

東京と魯肉飯と私

2017年の秋。
初めての一人海外旅で台湾に行くことにした私は、事前に台湾についていろいろ調べていた。

当時、私が知っている台湾のことといえば——
「五月天」というスーパーバンドがいること。
そして、九份は『千と千尋の神隠し』の雰囲気を味わえるらしい、という噂。

正直、その二つだけだった。

せめて「台湾の名物料理」くらいは知っておきたい。
そんな気持ちでグルメについて調べてみることにした。

当時私は池袋に住んでいたのだが、調べてみると近所に「有夏茶房」という台湾料理屋さんがあることが判明。

「調べるより、食べちゃった方が早いよね」
そう思い、さっそくお店へ向かうことにした。

こぢんまりとした店内に、多くはないメニュー。
ご夫婦2人だけで切り盛りされているご様子。
素敵な内装の店内でリラックスしながらメニュー表を見ていると
その中に、見つけた「魯肉飯(ルーローファン)」の文字。

丼ものが好きな私は、迷うことなく注文。
間もなくして目の前に置かれる、人生で初めての魯肉飯。

どんな味なんだろう? とワクワクしながらひと口。
……口いっぱいに広がる、八角の香り。

美味しい。でも、なんだろう……不思議な味。
これまでに食べたどんな料理にも似ていない。

しかし初めて食べるので他と比べようがなく
「これが台湾の味か。美味しいし、本場で食べるのが楽しみだな」
そんな感想だったと思う。

今思えば写真を撮り忘れた事をとても後悔している。

お店のご主人は台南出身だそうで、台湾へ行くことを伝えると、
「台南ではフルーツが美味しいよ」と教えてくれた。

「また食べに来ます」と挨拶してお店を後にする。

——これが、東京での私と魯肉飯の初対面だった。

そしてこのあと、魯肉飯という“魔法の食べ物”に魅せられていくことになるとも知らずに。

有夏茶房
 東京都豊島区西池袋5丁目25−9
最寄駅は要町駅
食べログはこちら

台湾で出会う本場の魯肉飯

台北101のフードコートの魯肉飯定食
台北101のフードコートの魯肉飯定食

お気に入りの台湾グルメが見つかったことで、私はすっかりテンションが上がっていた。
そもそも、当時の私はアジア料理そのものにあまり縁がなく、
「もしかしたら自分には合わないんじゃないか」と、勝手に思い込んでいた節がある。

……今となっては、なんて愚かな思い込みだったのだろう。

八角やパクチーにも抵抗がないと分かってからは、台湾旅行がますます楽しみになっていた。
そしていよいよ、初めての台湾上陸。

——とはいえ、今この記事を書いている時点では、
正直なところ、旅の細かい記憶はだいぶ薄れてしまっている。
でも、写真フォルダを見返す限り、最初の台湾旅行で食べた魯肉飯は
「十分の小吃店」と「台北101のフードコート」の2か所だったようだ。

思い返せば、魯肉飯は夜市で食べるよりも、お店に入り食べる機会のほうが多い気がする。
夜市はどこも混んでいて、席も落ち着かない。
だから私は、夜市では食べ歩きできるものを中心に選び
なるべく腰を据えて食べるような料理は夜市では避けるようにしている。
魯肉飯を夜市よりもフードコートや小吃店で食べる事が多いのは、そのせいかもしれない。

そして肝心の魯肉飯についてなのだが、ひとつ言えるのはバリエーションがとても豊かだということ。

具材に関しては、「これとこれ」と決まっているわけではなさそうだ。
卵が乗っていることもあれば、青菜が添えられていることもある。
時には、何も乗っていないシンプルな一杯が出てくることもある。

この“自由さ”もまた、魯肉飯の魅力のひとつかもしれない。

そして値段も手頃。まさに日常の味という感じだ。

それに、味の濃さもお店によってけっこう違う。
あっさりしているものもあれば、しっかり甘辛いものもある。
まだ2杯しか食べていないが「魯肉飯=一つの味」という思い込みは、
すぐに打ち砕かれた。

——これが、私が初めて台湾で食べた“本場の魯肉飯”の印象だった。

十分の小吃店で食べた魯肉飯
十分の小吃店で食べた魯肉飯

新竹で出会う究極の一杯

初めて本場・台湾の魯肉飯を食べてから、数年が経過した2023年。
このときの旅では、初めて「新竹」へ足を運ぶことになった。

新竹といえば、強風が吹くことで有名な街。
その風を活かして作られる「米粉(ビーフン)」の産地として、台湾では広く知られている。

私と同じくらいの世代の方であれば、学校給食でビーフンを食べたことがある人も多いのではないだろうか。

しかし意外なことに、新竹は台湾人の間で“砂漠”と呼ばれる街でもある。
——“砂漠”? なにが?

それは、美味しいものがあまりない街、という意味。
なんとも不名誉な呼ばれ方である。

でも、私にとっては、そこが「砂漠」だろうが「海」だろうが「山」だろうが関係ない。
大好きな台湾に来て、大好きな台湾料理を食べられるだけで、もう幸せなのだから。

そうして新竹に到着。

新竹で食事をするなら、やはり外せないのが「城隍廟夜市」。
市の中心にある「新竹都城隍廟」をぐるりと囲むように、たくさんの屋台が並んでいる。

新竹都城隍廟
新竹都城隍廟

ここではまず、さっぱりとした愛玉檸檬を飲みながら、名物の米粉やチマキを堪能。
夜市の空気を楽しみつつ、胃袋がちょうど温まったところで——

いよいよ、今回のメインイベントへ。

事前にリサーチしておいた、魯肉飯の名店「阿富滷肉飯」へ向かう。
すでに数品を平らげていたとはいえ、正直この時点で私は思っていた。

「……新竹のどこが“砂漠”なんだ?」
美味しいものだらけじゃないか。

阿富滷肉飯も、これはきっと期待できるぞ。
そんなふうにワクワクしながら店へ向かうと——
その期待は、すぐに確信へと変わった。

卵のトッピングは頼まなかったため、出てきた魯肉飯は、タクワンだけがちょこんと添えられた、極めてシンプルな見た目。

でも、スプーンでひと口すくって食べた瞬間、私は頭の中で叫んだ。

「……なんだこの絶妙なバランス!?」

濃いめの味付けなのに、白ごはんによく馴染んでいて、まったく重くない。
口に運ぶ手が止まらず、気づけばあっという間に完食していた。

かくして私は、“砂漠”と呼ばれるはずの新竹で、究極の一杯に出会ってしまったのだった。

新竹阿富滷肉飯で出会った究極の一杯
新竹阿富滷肉飯で出会った究極の一杯

阿富滷肉飯
営業時間:11時~0時
住所:300新竹市北區中山路75號

↑阿富滷肉飯の様子は動画でもチェックできます

南部では肉燥飯?

新竹で“究極の一杯”に出会った私は、同じ年の秋、念願の台湾一周の旅へ出発した。
台湾料理の中でも、私が一番好きだったのが魯肉飯。
だからこそ、各地でどんな魯肉飯に出会えるのかが、とても楽しみだった。

台湾には、魯肉飯以外にも丼もの系の料理がたくさんある。
中でも有名なのが、彰化の「爌肉飯」と、嘉義の「鶏肉飯」だろう。
もちろんどちらも台湾全土で食べることができるが、名産の地で食べると、その味はやはり格別だ。

実際に台湾各地で爌肉飯や鶏肉飯を食べたが、
やはり彰化で食べた爌肉飯はとても美味しかったし、嘉義の火鶏肉飯も本場ならではの旨さがあった。

では、魯肉飯の場合はどうだろう?
どこが“本場”なのか。いったいどの地域で食べるのが正解なのか。
調べてみても、これが意外と出てこない。

——つまり、それだけ魯肉飯は台湾全土で食べられている、ということなのかもしれない。

しかし、ここでひとつ明確に言えることがある。
それは、南部には「魯肉飯」が少ないということ。

私が感じたのは、おそらく嘉義よりも南へ下ったあたりからだろうか。
魯肉飯を食べたくなってお店を探してみるものの、
どの看板にも書かれているのは「肉燥飯(ロウザオファン)」の文字ばかり。

調べてみると「南部では魯肉飯のことを肉燥飯と呼ぶ」との事。
なるほどと納得して、肉燥飯を注文してみる。
……しかし、出てきたのはまったく別の料理だった。

肉燥飯
台湾南部の肉燥飯

まず、具の感じが違う。そして、何よりも味付けが甘い。
「呼び名が違うだけ」なんて、誰が言ったのだろう?
これは完全に別物だ。

確かにどちらも“煮込み豚肉をご飯にかけた料理”には違いない。
でも、肉燥飯はそぼろのような細かいひき肉が中心。
そこに、豚肉を乾燥させて繊維状にほぐした「肉鬆(ロウソン)」が添えられていることも多く、見た目からして魯肉飯とは異なる。

そして驚くほど甘いのだ。

実は台湾南部は肉燥飯に限らず甘い味付けの料理が多い。
「南部はなぜこんなに甘い味付けなんだろう?」
そんな疑問を抱いたまま旅を終えた私だったが、その答えを知るのは数年後のことだった。

台湾留学中、現地の先生からこう教えてもらった。

「昔、台湾の政治や貿易の中心は台南など南部にあったんだよ。
だからまず南部が栄えて、砂糖工場が次々と建てられた。
その影響で、南部では料理に砂糖をたっぷり使う文化が根付いたんだ。」

そういえば南部を観光しているとき、旧砂糖工場を活用した観光地をよく見かけた気がする。

また、台湾では糖尿病の人が多く、人口の約1割にのぼると言われているが、
先生曰く、特に南部でその傾向が強いのだそうだ。

なるほど。甘さの理由には、歴史的な背景がちゃんとあったのだ。

これは個人的好みなのだが私は魯肉飯が好きなので、南部に行くと北部の魯肉飯がやたらと恋しくなる。

屏東で食べた肉燥飯
屏東で食べた肉燥飯

そうして台北で見つけた究極の一杯

台湾一周の旅を終え、私は台北での短期留学生活をスタートさせた。

家はMRT「古亭駅」のすぐ近く。
そしてなんと、家の目の前には「師大夜市」が広がっていた。

師範大学のそばにあるから“師大夜市”。
少し安直なネーミングではあるけれど、かつては士林夜市や饒河街夜市と並ぶ、台北を代表する夜市のひとつだったらしい。

今では、周囲の住民からのクレームなどで夜市の規模は縮小。
どちらかといえば、学生向けの庶民的なローカル夜市として静かに続いている。

それでも、台湾好きの私にとっては、家の目の前に夜市があるというのはこの上ない幸せだった。

初日からテンションが上がり、私は次々と夜市グルメを「外帯(テイクアウト)」する。
滷味、葱抓餅、仙草ミルクティー……そしてやっぱり魯肉飯。

師大夜市はそれほど大きくない夜市なので、魯肉飯を扱う屋台も限られている。
そんな中で私が目をつけたのが「師大夜市 生炒花枝羹」というお店。

師大夜市生炒花枝羹
師大夜市生炒花枝羹

魯肉飯は「大:50元、小:40元」。
この日はすでにいろいろ買っていたため、小を注文することにした。

しかし——
店主は私の注文を完全にスルー。
注文が通っているのか不安になり、もう一度声をかけると、明らかに面倒くさそうな顔をされてしまった。

正直、ちょっとショックだった。

台湾の屋台ではこういった対応も時々ある。
でも、それも「料理に集中している証拠」なのかもしれない。
実際、留学が終わる頃にはすっかり慣れてしまった。

私は心の中で「まぁ新竹の魯肉飯が一番なのは決まっているんだから、また新竹に食べに行くまでの魯肉飯の味は適当でいいや」と思っていた。
そこそこの味で、お腹が満たせれば十分。そんなふうに期待値をぐっと下げて、食事を始めると——

……うまい。

甘辛く煮込まれた豚バラ肉は、しっかり味が染みていて、ご飯との相性が抜群。
濃い味でパンチが効いているが、全体のバランスは最高。

これはまさに「絶品」と言っていい。
ついさっきの不愛想な接客が、すべて帳消しになるほどの一杯だった。

かくして私は、台北でも——
いや、むしろ自分の“生活のすぐそば”で、もうひとつの究極の魯肉飯に出会ってしまったのだった。

師大夜市生炒花枝羹で見つけた究極の一杯
師大夜市生炒花枝羹で見つけた究極の一杯

↑師大夜市の様子は動画でもチェックできます

究極の一杯を求める旅は続く

これが、今のところの「私と魯肉飯を巡る物語」である。

正直、味覚なんて人それぞれだ。
私が「このお店が美味しかった」と書いたところで、
読んでくれているあなたも同じように感じるとは限らない。
……いや、感じる必要すらないと思う。

人にはそれぞれの「究極の一杯」がある。
だから順位なんて、つけられるものではないのかもしれない。
今回のエッセイは、あくまで“私にとって”の魯肉飯の記憶たち。

そして、美味しいという記憶には、いつも「思い出フィルター」がかかっている。

初めての台湾旅行で食べた一杯。
暑さと疲れのなかで、やっと辿り着いたあのお店。
頑張って予約を取った憧れの名店。
『この味がいいね』と君が言ったから。

——それぞれが、それぞれの「魯肉飯記念日」なのだ。

昔、大好きだった先輩に言われてハッとしたことがある。

「自分の嫌いなことを語るほど、愚かなことはない。
 自分の“好き”を思う存分語れ。」

だから私は、これからも
「美味しい」と思ったものや、「楽しい」と感じた出来事だけを、
自分の言葉で伝えていきたいと思う。

そしてまたいつか。
どこかで「これぞ究極の一杯だ」と思える魯肉飯に出会えたら——

そのときはきっと、また皆さんとその喜びを分かち合いたいと思っています。

私のSNSYouTubeでは最新の台湾情報を随時更新しているので、是非フォロー、チャンネル登録をお願いいたします。それでは今回はこの辺で。

Chan Kei Profile

Chan Kei
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写真や動画を通して旅の魅力を伝えています。
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